11月11日「介護の日」にちなみ、なら介護の日では介護について理解と認識を深める活動・イベントを行っております。

2009 記念講演会

演題「認知症老人の底力を地域に生かす」
◆◆講師プロフィール◆◆

多湖 光宗(たこ みつむね)

医師・(福)自立共生会理事長・(医)創健会ウェルネス医療クリニック院長(三重県桑名市)。
大学病院及び関連病院に勤務の後、郷里で地域医療に取り組む。老人デイケア、病児・乳幼児保育、放課後児童クラブなどを併設、トータルな家庭支援を実践。学童保育併設の認知症高齢者のグループホーム「自立共生ひかりの里」を運営。
著書に「痴呆老人力を子育てに生かす」他。国際アルツハイマー病協会第20回国際会議・京都・2004において、奨励賞を受賞。



すべての人・生き物には役割と生きる意味がある(共生の意味論)。しかし制度は人間を支援する側、される側にわけ、高齢者・障がい者・子どもなどはいわゆる福祉の対象、支援される人とされ、その役割をうばってしまっている。

一方、人類学では、生殖能力を失った老人になっても人間が生きながらえるのは、子育てに老人が大切な役割を果たしてきたからだという説がある。だが、現在の日本では、核家族化が進行し、子育て等に経験豊富な老人の知恵が親・子どもに伝わらなくなり、家庭の養育力が低下してきている。我々は、平成13年より留守家庭児童の「生活の場」となるべき学童保育を併設するグループホーム、平成15年より託児機能を持つ宅幼老所を開設し、認知症老人の底力を子育てや防犯など地域に役立てることをしつづけている。

その中でそれぞれの得意なこと昔とった杵柄で活躍してもらうことも大事であるが、認知症特有の行動障害の「くりかえし」が子どものしつけに役立ち、認知障害の「トンチンカンさ」が「いやし」となり、ひきこもりのケア、非行少年の更生などに役立つことも分かってきた。また、迷惑行為と考えられる行動障害の徘徊も、1人で歩けば「徘徊」だが、みんなで歩けば「散歩」、腕章すれば「防犯パトロール」となる。このような実践ですべての人が役割を持ち、社会資源として生かされれば、ノーマライゼーションという理念も実現し、地域も安心・安全となるであろう。