≪親守唄大賞受賞≫オムライス 作詩/中原 賢治(岐阜県岐阜市)
≪親守唄優秀賞≫もっと・もっと・もっと 作詩・作曲/羽賀 志津江(北海道石狩市)
≪入選≫母の歌 作詩/猪瀬 さと子(栃木県那須塩原市)
≪入選≫幸せの両替機 作詩/佐々木 俊典(岩手県盛岡市)
≪入選≫母の手は 作詩/あべ こうぞう (広島県福山市)
≪親守唄大賞受賞≫
オムライス(作詩の部)
作詩/中原 賢治(岐阜市/67歳)
こどもの日になると
ぼくは 母と食べたオムライスを想い出す
父が結核で入院してから
母は細腕ひとつで
雑貨屋を切り盛りしていた
小学生だったぼくも店番をしたり
問屋まで仕入れにもいった
こどもの日
「うまいもんでも食べようかな」
そう言う母の腰にぼくはしがみつき
乗った自転車は大きく揺れた
デパートの食堂で初めて食べたオムライス
オムライスの大好きな母は
ひもじい食卓をぼくにわび
ふたりでニコニコしながら食べた
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早く食べ終わったぼくの皿に
母は 自分のオムライスを半分渡した
「たくさん食べて
たくさん勉強してもらわんとな」
ぼくのスプーンは笑顔で輝いた
今でもオムライスを食べると
母とのオムライスを想い出す
病弱な夫をもち 働きづめだった母が
食堂で見せた嬉しそうな笑顔
ふたりだけで味わった
ささやかな幸せの時間
母の日
青空の遠く向こうにいる母へ
ジェット気流の宅配便で
特上のオムライスを届けたい
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≪親守唄優秀賞≫
もっと・もっと・もっと 作詩・作曲/羽賀 志津江(北海道石狩市/70歳)
父さんと母さんと兄ちゃんと私
白い犬とカナリアが私の家族
貧しくて辛かった そんな時代も
子供だった私には 楽しい毎日
出来ることならもう一度
あの頃に帰って もっともっともっと
母さんに甘えていたかった
暖かくて柔らかいあの胸が
大人になっても恋しくて
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短腹ですぐ怒る 恐かった父さん
兄ちゃんも私も 母さんの影
淋しさ隠して 働く父さん
疲れていたんだね 今なら分かる
出来ることなら昔話
お酒でも飲みながら もっともっともっと
父さんとお喋りしたかった
恩返し 親孝行 できなかったね
カラオケ 温泉に行きたかったよ
父さんの歌好き 兄ちゃんが継いで
母さんの太っちょ 私が継いだ
思い出語って 時代(とき)を継ごう
いつまでも いつまでも 大切な家族
父さんと母さんと兄ちゃんと私
白い犬とカナリアが思い出家族 |
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≪入選≫母の歌 作詩/猪瀬 さと子(栃木県那須塩原市/62歳)
幼き日 母の手つないだ帰り道
母の手ひいて デイより帰る
一緒のお風呂で母の背中(せな)洗う
また小さくなって小さくなって
反抗期 母こまらせて叱られて
押し入れ隠れ そのまま眠る
しもつかれ 作って母に届ければ
味がうすいと言って完食
なつかしや 渋柿もぎり母の手を
かりても落としてキズつけて
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草だんご よもぎ入れすぎ苦笑い
でも美味しかったね あんこにきな粉
母迷う 大人のぬり絵の花の色
宿題手伝ってくれたね昔
かけっこで母の笑顔でがんばれた
ビリではないが走りきった日
かぜひいて バナナがご馳走幼き日
今では仏前の供物の中に
親孝行 してきたつもりそのつもり
天に向かって母の歌うたう |
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≪入選≫幸せの両替機 作詩/佐々木 俊典(岩手県盛岡市/61歳)
もしも今の私の幸せの両替機があったら
きっとおかあちゃんの苦労や涙 悲しさ
寂しさ 悔しさ 嬉しさ 喜び 感動など
いろんな感情がジャラジャラと
コインみたいにいっぱい
溢れてくるんだろうね
いつも働いている姿しか
目に浮かばない おかあちゃん
いつも朝早くから遅くまで
仕事をしていた おかあちゃん
貧しかったけど 遠足や運動会の時は
いっぱい手作りのお弁当を
作ってくれた おかあちゃん
通信簿でいい成績だった時は
笑顔で喜んでくれた おかあちゃん
おとうちゃんに怒られた時に
かばって慰めてくれた おかあちゃん
お兄ちゃんとの兄弟喧嘩を
大きな声で本気で叱った おかあちゃん
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私が二十歳の時に脳梗塞で
自宅の縁側で倒れて
救急車で病院へ運ばれた おかあちゃん
偶然その時
おかあちゃんの友人が訪ねてきて
奇跡的に命を取り留めたね
後遺症で時々言葉が出なくなって
落ち込む事もあったけど
おかあちゃんの命が救われた事が
何よりも どんな事よりも嬉しかったよ
それまで
おかあちゃんばかりに頼っていたけど
そのことがきっかけで
少し親離れができた気がします
数年前にお父ちゃんが他界して
寂しそうなおかあちゃん
耳が遠くなっても
補聴器を嫌がるおかあちゃん
最近寝てばかりいる事が
多くなったおかあちゃん
そして以前よりも
口数が少なくなったおかあちゃん
私のしあわせを両替して
溢れるほどに出てきた
汗で汚れた苦労色のコイン
一枚一枚ピッカピカになるまで
磨いて贈るからね
感謝の二文字を添えて・・・
おかあちゃん 長生きしてください |
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≪入選≫母の手は 作詩/あべ こうぞう (広島県福山市/79歳)
今ぼくは母の手を引いている
皺としみだらけのこの手
あの頃の手は白くて細かった
その手に幾度連れられて行ったことだろう
七五三の宮参り
幼稚園の入園式 卒園式
小中学校の入学式 卒業式
病院の診察
ぬくぬく ほんわか つるつる
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その手で幾度お仕置きされたことだろう
我がままを言ったとき
宿題を忘れたとき
妹をいじめたとき
約束を破ったとき
ゴツン ピシャリ ペンペン
今の母は
虚ろな目をして口もきけない
アルバムを見せても知らん顔
ぼくのこと覚えているのだろうか
それでも
手を握るとほんの少し握り返す
お母さんぼくだよ 息子だよ
何時までも何処までも手を引いた
やっぱり母の手は温かった
病院の芝生のベンチに並んで座った
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